創立75周年ロゴ制作秘話インタビュー
75周年記念事業の象徴の一つである75周年ロゴ。スタイリッシュかつ独特で癖になるこのデザイン、一体どうやって生まれたのでしょう? 生みの親であるデザイナーの中村憲幸さんに、制作時のお話を伺いました。
75周年
記念事業室
― 今回、中村さんはアートディレクター兼デザイナーとしてロゴ制作を担当されたそうですが、どのようなチームで取り組まれたのですか?
中村さん
ロゴ制作にあたり、まず弊社のプロデューサーと、コピーライター、そして複数のデザイナーでチームを組みました。私はアートディレクターとして、自分でもデザインしながら他のデザイナーたちから出てきたデザインのディレクションもし、精度を上げていくという立ち位置でした。
75周年
記念事業室
― 依頼を受けた当時、日本工営にはどのような印象をお持ちでしたか?
中村さん
歴史ある安定したグローバル企業、という印象でした。しかし実際に日本工営の担当者の方々とお会いしたとき、「現状維持ではいけない」「75周年を、今後さらに発展していく上での好機にしたい」といったお話を伺って、安定したイメージとは裏腹に「75周年を機に、未来へ挑戦していこう」という強い意志を感じたのを覚えています。
75周年
記念事業室
― 日本工営からは、全体のコンセプトとして「歴史」「未来」「結束」「世界」というキーワードを提示させていただきました。このコンセプトをデザイン化していく過程というのは、どのようなものだったのですか?
中村さん
75周年のロゴは、社内・社外を問わずに日本工営の未来に期待を抱くきっかけとなるもの、そしてグループの結束を強めるシンボル的存在となるもの、さらには、日本工営の知名度・信頼度・好感度を高めることができる発信力のある力強いものでなければいけないと理解しました。
ただし、「歴史」「未来」「結束」「世界」の全てを盛り込もうとするのではなく、どれか一つを柱にして視覚的に全体を感じるデザインにしないと伝わらないだろう、とも考えました。コピーライターとブレストしながら、最終的には「結束」というワードにフォーカスし、シンプルに考えながらスローガンとのバランスも見つつ、発想の幅を広げていきました。
75周年
記念事業室
―「結束」をイメージの中心に置いたんですね。
中村さん
社員それぞれが「結束」することで生まれるシナジーが一つの大きなベクトルとなり、力強く次の未来に向かうイメージ。それが、デザインのコンセプトになりました。「結束」というワードには、過去・未来、日本・世界など相反する様々な多様性を認め合う意味合いも含まれています。
今回もそうでしたが、言葉からインスピレーションを受けて表現の拠りどころにすることは、デザインをする上でいつもベースとなっています。
提案前に作成されたラフ案の一例。
75周年
記念事業室
― ロゴは、スローガン「Future Unlimited」とシンボルマーク「75」が組み合わさっています。スローガン案とデザイン案を擦り合わせていく作業とは、どのようなものなのでしょうか?
中村さん
今回は、まずコピーライターが決めたスローガンの大枠の方向性にそってマークのデザインに取りかかり、デザイナーとコピーライターがお互いに案を持ち寄ってブレストし、擦り合わせて…、というのを何度か経て精度を上げていきました。このような言葉に縛られすぎない進め方だと、逆にデザイナーの目線が変わって、意外なおもしろい切り口が浮かぶという良さもあります。
75周年
記念事業室
― 抽象的な言葉のイメージを具現化する際に、心がけていることはありますか?
中村さん
主観と客観を行き来しながら、出てきたキーワードやイメージを具現化するようにしています。とくにロゴ制作などに関しては、個人的な趣味嗜好ややりたいことは考えず、フラットに対象と向き合うようにしています。
イメージを形にする際は、初めから細かく作り込むというよりは、まずはざっくりと形にします。ざっくり形にしただけでも言いたいことが浮かび上がってくるデザインのほうが、あとあと頑丈なロゴになりますし、何より伝達速度が速いように思います。
あとは、形にしてから一度寝かすという作業を繰り返します。客観的に見ているつもりでも、次の日に見たら、また違う印象になっていることも多いので。
75周年
記念事業室
―プレゼンまでにいくつラフを作成されたんですか?
中村さん
今回は30案くらいですね。手描きを合わせると100案近くにはなると思います。案が固まってきてからは、紙の上だけでロゴ単体を制作するのではなく、名刺や封筒、トートバッグ、タオル、扇子など展開が想定されるツールやメディアを考慮し、仮レイアウトで検証しながら制作を進めました。そうすることでイメージが広がり、精度も上がるように思います。
提案時に持参されたツール・メディア展開案の一例。
75周年
記念事業室
― 確かに、プレゼンでは様々なツールにロゴをレイアウトしたものも提示されていましたね。なかでも目が行ったのは名刺でした。名刺は社員が必ず使うものなので、「このロゴが名刺に入ると、こんなイメージになるのか」と、かなり興味深く感じました。
75周年
記念事業室
― 今回のロゴ制作で、とくに苦労されたのは、どのような点ですか?
中村さん
言いたいことを絞り、削ぎ落す作業です。あまり個性的過ぎても時間が経てば古く感じてしまうし、シンプル過ぎても記憶に残らないデザインになってしまいます。普遍的な要素を残しつつ、強くてシンプルなデザインを目指しました。
そして、わかりやすさ。昨今では、あえて違和感のあるデザインにして興味を引くケースも見受けられますが、今回のロゴ制作においては本質ではないと思い、老若男女を問わず、外国人でも理解できるようにわかりやすさを重視しました。
75周年
記念事業室
― そうして、シンプルでスタイリッシュな「75」のデザインに行き着いたんですね。
中村さん
結果的に、ロゴは水平ラインと斜めラインのみで構成する形にたどり着きましたが、初めは7と5それぞれ一番左の斜めラインも他と同じ太さだったんです。それをコンセプトの柱である「結束」に立ち返って、そこが際立つように左の斜めラインの太さを調整していきました。7と5の間の余白にもこだわって、全体のバランスを見ながら、0.1㎜単位での調整を何度も繰り返し、仕上げていきました。
7も5も、一番左端のラインだけが細く、斜めになっています。
75周年
記念事業室
― このロゴは、若い社員にも年配の社員にも好評です。なんだか癖になるデザインというか…。この「癖になる感じ」は、意図的にされているんですか?
中村さん
シンプルだけど個性があるデザインを目指していたので、そこを評価していただけてうれしいです。必要最低限の要素で言いたいことを伝えられるものが、ロゴとしては強いと考えています。それを意識することで何十年先も残るロゴになるのだと思います。
75周年
記念事業室
― 最終的に他社の案も含め20以上のデザイン案を見ましたが、このロゴを見た瞬間、「おっ!」と思いました(笑)75の数字が真ん中にどんと座っているような配置のデザイン案が多かったのですが、このロゴは数字が右上に跳んでいくようなデザインで、未来に向かう姿が素直に表現されていると感じたんです。ノベルティのレイアウト案も、すべてよくハマっていて扱い勝手もよさそうだなと思いました。
実は、ロゴの最終決定をしたのは、75周年記念事業委員会委員長でもある有元社長なんです。最終的に絞り込んだ5案を提示したとき、社長が間髪入れずに指さしたのが、このロゴでした。
中村さん
ありがとうございます。プレゼンでは和やかな空気を作っていただき、こちらの意図をしっかり聞いていただけた印象でした。参加された社員の方によって反応は様々でしたが、ポジティブな反応が多く、終わってからひと安心したのを覚えています。
75周年
記念事業室
― ロゴの基本カラーはブルーですが、カラフルなバージョンも作っていただきましたよね。
中村さん
企業ロゴがブルーの欧文タイポグラフィ*であり、かつ、ブルーが企業カラーとして認知されていましたので、企業ロゴと75周年ロゴとの併用を意識してデザインしました。ブルーをベースカラーにしつつもサブカラーでカラフルなものを用意したのは、多様性も表現するためです。
*英字フォントの体裁を加工してデザインしたもの。
75周年
記念事業室
― カラフルなバージョンのロゴデザインは、弊社の多岐にわたる事業を象徴しているようですね。75周年記念事業期間中は、これらのロゴが入った名刺を用意しており、社員一人ひとりが自由に好きな色のデザインを選べるようになっています。社員みんながどのように使ってくれるのか、楽しみです。
75周年
記念事業室
― 最後に。この75周年ロゴに託した思いをお聞かせください。
中村さん
このロゴは、75周年記念事業における日本工営社員の皆さんの思いや取り組みを形にしたものです。今後、社員の方々が仕事を進める上で壁にぶつかったときなどに、立ち戻る場所のような存在になってほしいと願っています。社員の結束を強めるシンボル的存在として、日本工営グループがさらに発展するきっかけになってくれるのであれば、デザイナ―冥利に尽きます。
※取材は2020年5月中旬にオンラインで実施し、撮影は2021年3月に行いました。
The 75th Anniversary Secretarial Office requested Mr. Noriyuki Nakamura (Art Director/Designer, amana inc.) to create an original logotype for the 75th Anniversary of Nippon Koei. While keywords set for the Anniversary are "History", "Future", "Unity" and "Global Community," this logotype was focused, in particular, on "Unity." It was selected out of nearly 100 candidates provided by Mr. Nakamura and adjusted to every 0.1mm to symbolize “Unity” simply and clearly.
Message from the Designer
Mr. Noriyuki Nakamura, Art Director/Designer, amana inc.
I have put a wish in this logotype from which each NK staff member can get energy and inspiration
to facilitate close cooperation with domestic and overseas colleagues, to overcome difficulties at
work and lead to the further development. That would be a great honor for a designer if the wish will
come true even a little bit.